明治以前の川

午前中のシンポジウムは私の研究とほとんど関連のない話だったので、元町の北方民族資料館へ行き、アイヌウィルタの歴史と文化に関する資料を見てきた。アイヌの生活を描いた明治期頃の絵画の中に、陸水に関係のあるものが何点かあったので、縮小した画像を載せる。

「ベッセイ」と呼ばれる川貝を採集する図(部分)。「黒色で楕円形」ということなので、おそらくカワシンジュガイではないかと思う(勿論、ドブガイやカラスガイの可能性もあるが、「楕円形」という形容からはまずカワシンジュガイがピンとくる)。非常に成長の遅い貝だが、いるところには高密度で生息するので集めやすかったのだろう。

氷に穴を開けてヒシを採集する図。この絵を、実際のヒシをよくご存知のH大のI先生やT邦大のK先生に見せたところ、ヒシの植物体は10月下旬には枯れてしまい、果実も水中に落下してしまうので、このように氷の下から果実のついたヒシの植物体を引き上げることはありえないという指摘だった。絵を描いた人は実際にヒシ取りの場面を見たわけではないのだろう。説明文をよく読むと、氷の下にボロの束などを装着した棒を差し入れ、とげのある果実だけをからめとって引き揚げたものらしい。