おかえりTさん

アルゼンチンに1年間留学してきたTさんが帰国。学生部屋が一気にかまし賑やかになった。彼の地の貴重な寄生虫の遺伝子サンプルもいくつか持ち帰っており、これは先方の研究室との共同研究として分析する予定。

Tさんのお土産のアルゼンチンチョコレート(滞在先の街の名物だそう)、T先生のお土産のベルギーチョコレート、大学生協の新装開店記念にもらったチョコブラウニー。好物がいっぱいあって嬉しい。

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理学部に貢献してほしい

去年、「環境研究倫理特論」で特別講義をしていただいた朝日新聞社の長野さんが、今度はNMRパイプテクターを取り上げた記事を書かれました。

webronza.asahi.com

この装置の原理は高校程度の初等物理の知識で十分におかしいと理解できるものなのですが、大々的な広告を打つ手に出ているせいか、購入してしまっているビルやマンションが既にかなりあるそうです。商品の性質上、効果の有無がはっきりわかるようになるのは数十年後なので、その時までに業者が逃げてしまっていたらおそらく損害を取り返すことは困難になります。

一昨日の国立26大学理学部長会議で、各大学の地域貢献や地域教育への取り組みの実例を聞きましたが、やはり産学連携事業や高大連携の話ばかりで、この新聞記事のように消費者を守る活動ですとか、消費者がいんちき話の被害に合わないように教育する活動はまったく行われていないようでした。一部の大学教員や退職教員が、時には身銭を切って実験をしたりスラップ裁判で戦ったりしながら対応しているのが現状です。産学連携事業や高大連携は、受託金を受け取ったり受験者が増える等大学にとってもオイシイ話ですが、消費者保護や義務教育レベルの(でも社会で生活するためには大切な)普及教育は、大学にとってはコストが大きいのに見返りがありませんから、推進に消極的なわけです。しかし、初歩的ないんちき話によって社会が被る被害はとても大きいので、理学部教員や理学の高等教育を受けた社会人(長野記者も理学研究科の出身です)がこのような事例にどんどんコメントしていくことはとても重要な役割です。ですから、大学の理系学部が消費者保護のための講演や出版を行ったり、それに携わる人材を輩出したりすることも、地域貢献の項目としてぜひ積極的に評価してほしいと思います。小中学校の義務教育課程における理科教育を専門家としてサポートすることも、とても大きな貢献であると思います。国立大学理学部長の皆様、いかがでしょうか。

異分子混入

昨日今日と「国立26大学理学部長会議」「国立大学理学部長会議」なるものに陪席してきました(大学命令です)。もう十数年、国立大学理学部の動向を知るためにウチの学科から一人派遣されることになっていて、とうとうそのお鉢が回ってきてしまいました。それで講義を臨時休講にして、このとんでもなく居心地の悪い会議(なにせ国立大学でも理学部でも学部長でもないので、参加資格にかすりもしていない)に出席せざるを得なくなりました。しかも、他の公立や私立の理系学部も陪席してるのかな〜と思っていたのですが、会場についてみたらなんと陪席はウチだけと判明。いやホントになんでお前がここにいるんだよという状態で、気まずさここに極まれりでした。

それで2日間、各地の国立大学から提出された議題だとか文科省担当者による最近の国立大学法人をめぐる動向や来年度概算要求の説明とか聞いてきました。もちろん、ウチには国立大学のように文科省の要求や評価がすぐに下される訳ではないのですが、県も国立大学に対して行われた施策を参考にするので、やがては公立大学も同じようなことになる可能性が高いという訳です。でも、実際に聞いてみるとやはり国立の理学部とウチ(公立大の環境科学部)とでは設立理念や大学ミッションからして全く違うので、問題のありどころも大きく違い、なかなか国立大学の対応を参考にするとも言えないのだなあと感じました。

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今日配られた文科省資料の一部です。右のグラフが国立大学の基盤的な教育研究設備予算の経緯(1993〜2019)で、赤字のメモが国立大学独法化の年(2003年)の位置です。左は国立大学の教育研究設備の残存価値。古くなった研究用備品の更新などができていないため、備品の資産価値は一直線の右下がりです。文科省自身が「老朽化・陳腐化が進行している」とここに書いていますので、どうやら国立大学の研究環境は老朽して陳腐であるとお認めになっているようです。これでは論文生産量が下がるのも当然の結末ですね。

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別のページには「研究環境の劣化等に伴う基礎科学力の伸び悩み」とちゃんと書かれていました。しかし、その解決方法は研究環境を改善することではなくて「大学の枠を超えて知を結集し、学術研究を効率的・効果的に推進する共同利用・共同研究体制を最大限活用」することだそうです。さすがにこれには「これが解決になるのか?」疑問の声が上がっていました。

 

 

実習場所を求めて

後期の授業が始まり、もうすぐ川虫実習が始まります。例年大学近くのI上川で実施している今年の実習ですが、今年はどうしても地元漁協の同意が得られませんでした。この時期、I上川の下流域はアユの産卵場として保護水面になっており、河川生物すべての採集が禁止されています。そこで、例年は県に特別採捕許可を申請し、地元漁協さんに河川立ち入りの了解を得た上で川虫実習を実施していたのですが、今年はどうしても漁協さんから了解をいただけませんでした。どうも、昨年一昨年とアユが不漁だったため、産卵水域の保護に神経を尖らせていられるようです(今年はまずまずの豊漁)。仕方がありませんので、大学からはだいぶ遠くなりますが今年は保護水面外で実習をやることにし、同じ実習担当のO先生、Y先生と候補地の下見に行きました。

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大学の南にあるU川。ここは天井川ではないため川底が低く、琵琶湖からの逆流や周囲の水田からの泥流入などにより淀んでいます。川虫実習向きではありません。

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泥っぽいU川ですが、中を覗くと中ぐらいの大きさ(20cm程度)の魚がキラキラと群れています。どうもオオアユのようです。I上川やS川にはコアユが遡上しますが、U川にはコアユの姿はなく、オオアユばかりでした。オオアユとコアユで産卵河川が異なるのでしょうか?

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お次はI上川を遡り、中流域まで行ってみました。ここは保護水面ではないので水生昆虫の採取は問題ありません。ところが完全に瀬切れしており、水がほとんどありませんでした。ここも駄目です。

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川の水はこのようにほとんど伏流してしまい、わずかな水たまり状に顔をのぞかせているだけです。

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結局、実習ができそうなのはS川ということになりました。堤防には白いヒガンバナが咲き乱れていました。また後日、最終的な実習場所決定のため細かい下見をする予定です。