足元からの環境保全

本を本棚に詰め込み,ようやく部屋が少しすっきりする。
この大学の中には事務棟と講義棟を取り巻く円形の水路があり,「環濠」と呼ばれているらしい。何やら敵の来襲に備えているような呼び名であるが,研究棟などそれ以外の建物は全部環濠の外だから攻められ放題である。
今,この環濠にはアヒルの他に生き物は何もいない。底のコンクリートの上にはデトライタスが厚く溜まり,タニシの這ったような跡が少々あるだけである。今日のゼミで,その理由が判明した。
環濠にはもともと,放水口からビワヨシノボリなどの小魚が勝手に入ってきて住み着いていたそうである。ところが,環濠の水は実はとなりの水産試験場の排水を引いているそうで(水利権の関係で琵琶湖の水は使えないそうだ),当然ながら思いっきり富栄養であり,日当たりのよさもあってアオミドロが大繁茂したそうだ(今でもアオミドロが所々で塊になって水中を漂っている)。それが水際に溜まって臭いので一部の教員から苦情があり,その対策として事務部はコイを1000匹(!)放したそうである。こうしてアオミドロは一掃されたのだが,お次はそのコイがコイヘルペスにかかって全個体処分され,かくして環濠から生き物の姿が消えた,という次第。
で,近頃またコイやソウギョ(!)を放そう,という動きが一部にあるらしく,それに対して環境科学部の学生たちが再考を求める声を上げている。確かに,学内にソウギョなんか放流された日にゃ環境科学部の名が泣く。
この環濠は,両側が割石積みで底は真っ平らなコンクリートであり,植物は全くなく,一般的な魚が棲みやすい環境には見えない。もちろん,栄養塩の吸収効率もあまりよくないだろう。九州のF工業大学では(多分現場実験も兼ねて)自前で作成した水質浄化装置を構内の池の取水口に取り付けてたらしいが,ここにはそんな技術開発やっている人はいないのかなあ?