基礎を大切に

1回生の生物学の講義,最終回の課題は「15回の講義で一番印象に残ったこと」を挙げてもらった。まだ締切前なので一部の学生の意見しか見ていないが、予想以上に印象に残った場所がバラバラなのに驚いた。授業で特に強調した場所、例えばメンデルの法則の用語の転換だとか生命の起源についての最近の学説、あるいはウィルスについての基礎知識などは予想通りという感じだが、もっと基礎的な部分、つまり高校教科書に載っているレベルのことでも「印象に残った」という学生がかなり多いのである。「DNAが遺伝情報ということは知っていたけれど、実際に塩基配列からアミノ酸配列に置き換えるのは初めてだったので面白かった」とか「アロステリック酵素をアニメで見たこと」とか「呼吸でエネルギーを得る過程がすごく複雑だということ」という感想が出てきた。おそらく半分以上の学生が高校で「生物基礎」までしかやっていないので、高校レベルの話でも目新しく、面白いと感じたのだろう。高校で受験のために「生物」を勉強した学生にとっては「暗記ばかりさせられた」という記憶しかないかもしれないが、こういう本当に重要な基礎事項を面白く講義すること、またそのことを発見した過去の研究者のすごさをきちんと伝えることをもう一度しっかり考え直さなければ、と思う。

仕事のプロは何処に

秋に受理された院生Tさんの論文(アルゼンチン留学の成果)が公開されました。受理からかなり長くかかりましたが、原因の1つは最初に来た校正刷りのレイアウトが滅茶苦茶だったため。図の挿入位置も適当ならばインデントも原稿とはぜんぜん違う有様で、全面的にレイアウトの修正を指示する羽目になりました。筆頭著者のTさんは頭を抱えていましたが、私も長年投稿していてここまで酷いのは初めてでした。出版経費を節約している国内誌などでは著者にレイアウトさせるという雑誌もありますが、普通はプロの印刷屋さんがするものではないのでしょうか。

そういえばついこの前に来た査読依頼も、引き受けて読み始めてみたら、その雑誌の目的にまったく合わない研究でした。普通、こういうのは査読者に回す前に、編集委員の方で判断して別雑誌への投稿を勧めるものです。そこで編集委員に「これは内容が貴誌に合わないのでは?」とメールすると、「仰るとおりですね」という返事が来ました。ちゃんと仕事してほしい。

link.springer.com

フルボッコ

土日は「今日はこれだけやる」と決めてマイペースで仕事を進められたのだけれど、ウィークデーは違う。朝から、頭の中からすっ飛んでいたあれこれの問い合わせのメールやら電話やらが入ってくる「先生、今年度の研修会は…」「修論発表会の案内はもう出ていますか?」「○○の締切が…」。防御していないお腹にボディブローを浴びるようなもので、一々堪えてなかなか予定の仕事が進まない。あうう。

ラストスパート

「環境生物学I」も明日のオンライン講義で終了。最後は生物全体の系統進化の話で、なるべく新知見を紹介するようにしているので、この授業で一番「大学らしい」ところなのだが、生物学に親しみのない学生には一番呆然となってしまうところだろう(主に最近の真核生物の上位分類群の謎名称オンパレードのため)。 いつも90分の授業のスライドは27〜28枚程度がぴったりなのだが、先週と今週はちょっとリキを入れたら30枚オーバーになってしまった。授業がオンライン一本になり、対面授業の負担がなくなったのでちょっと準備を張り切りすぎてしまったかもしれない。主には暗記ではなく、現代生物学の進展を概観してもらうのが目的なので、明日の課題は感想を書いてもらうことにした。

書評を書きました

 

 

寄生虫のはなし ―この素晴らしき,虫だらけの世界―

寄生虫のはなし ―この素晴らしき,虫だらけの世界―

  • 発売日: 2020/10/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 日本生態学会ニュースレターに書評を書きました(どさくさ紛れに寄生虫生態学・疫学談話会の宣伝も)

https://esj.ne.jp/esj/newsletter/No53.pdf