ヘビ受難

この1年間、ヘビの研究者の方2名との共同研究をやっていて、水族館で飼育されているヘビや研究用のヘビが死ぬと連絡が来る。だいたい、この辺りには生息しない貴重な種類のサンプルなので、遺体の有効な学術利用の一環として寄生虫の検査をさせてもらっている訳である。ところが、研究室に度々「ヘビ標本」などと書かれた荷物が送られてくるため、事務員さんたちがすっかり私はヘビに詳しいと思ってしまったらしく、今日事務部から内線電話があって「学内でヤマカガシらしいヘビを捕まえたのですが、研究用に要りませんか?」と聞かれた。当面ヤマカガシの寄生虫を調べる予定はないが、本当にヤマカガシならその辺にリリースするわけにもいくまいと思い、とりあえず件のヘビを引き取りに行った。見ると、ヤマカガシではないということはすぐに分かったが、さりとて何ヘビかもその場ではわからなかった。

調べてみたらシマヘビの幼蛇であった。親とはずいぶん色模様が違うものである。勿論無害なので、近くの草むらに放してやった。ちゃんと生け捕りにしてくれたので、無用な殺生をしなくて本当に良かった。昔、別の大学で勤めていた時、そこの事務員さんが血相を変えて「うちに出たんですけれど、マムシじゃありませんか?」とテープでぐるぐる巻に封印した缶を持ってきて、中から小さなアオダイショウの赤ちゃんの撲殺死体が出てきたときは泣きそうになったものだ。