新年読書


先ほど生協で入手してきた本。湖北のローカル雑誌「みーな」が用水路特集を組んでいたので(どれだけマニアックなんだ…)買ってみたが、これに出ている「餅の井落とし」という風習がめちゃくちゃ面白い。琵琶湖が近い割に水に困ることの多かった滋賀では、昔は集落間の水争いが日常茶飯事だったわけだが、その解決方法として「擬似戦争」をやっていたのだという。どういうことかというと、渇水の時、下流側の村が川の井堰を管理する上流側の村に白装束で乗り込み、村長に「今から堰を切ります」と宣言する。それに対して上流側は「力づくでやれ」と応じ、それに従って下流側は川へ行って堰を破壊する(上流側の村人はもちろん監視している)。そして下流側の村人は帰っていくが、上流側はその姿が見えなくなるまで、堰の修復には着手しないしきたりだったという。これで下流側は一時的にせよ合法的に水を手に入れることができ、一方上流側は、水利権を譲ったのではなく、力づくで奪われたのだということにして体面を保ったという。争いごとの平和的解決法として、対話や契約の他にこんな方法もあるのだ。これはまさに儀礼的闘争そのものだし、どういう条件の時にこのような方法が安定解として存在するのか、動物行動学の研究対象になりそうな気がする。なお、擬似戦争をする際には当然のことながら徹底した「礼儀」が実行される。本来、礼儀とかマナーとはこのように、敵対し合っている人や集団どうしが(一時的にせよ)停戦協定する際に必要なものとして生まれてきたルールなのだろう。
写真の下は川崎悟司著「すごい古代生物」(キノブックス)より、アンモナイトのつぼ焼きのページ。