来年の学会シンポでの資料にするため,S大学教育学部で,小〜高等学校の教科書に取り上げられている水環境教育の例を一渡りさらった。教育系の皆さんには常識だろうけれど,私自身の覚えのためのメモ。
まず,新学習指導要領で,どの学年・教科で環境教育が行われているか,まとめたのがこれ。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/013/003/shiryo/attach/1299713.htm
水環境に関して言えば,最初に体系的に取り上げてられるのは小学校3・4年の「社会」で,上水・下水とゴミ問題がどの出版社でも扱われている。それから5年生になると環境保全活動の話が取り上げられでいる。2つの出版社で,それぞれ別の環境教育施設が取り上げられていたのだが,どちらも「○○博物館では,××の放流など保護を行っています」と,あたかも生物の放流が保護活動の主力事業であるかのように書かれていたのにはちょっとげんなりした。現実には,どちらの施設も普及教育活動や生息状況の調査が中心であって,放流は少なくともメイン活動ではないと思う。これは執筆者の保全活動に対する見識水準が出てしまっているのだろう。「理科」で生物と環境が出てくるのは6年で,社会科よりも遅い(なお,ある出版社の6年理科「生物と環境」の扉ページを見た瞬間,私は盛大に吹いてしまった。教科書の監修者も悪ノリすることがあるわけだ)。
私が気にしている水質指標生物は中学3年の理科(第二分野)で取り上げられることがもっとも多く,小学6年理科でも1社。高校の「生物基礎」にも出てくるが,出現頻度は下る。従って,水質指標の教育効果(あるいは弊害)を考える時は,現状では中学生の理科知識水準に対してと考えるべきなのだろう。この分析はまたいずれ。
ところで,教科書をめくっているうちにちょっと気になったのがこの図(原図カラー)。

小学5年の社会科教科書に出ていた「びわ湖のよごれ方のうつり変わり」で,「水のよごれ方は,よごれを分解するのに必要な酸素の量であらわすことができます」とあり,CODのデータだ。図示されたのは1980(昭和55)年から2002(平成14)年まで。
琵琶湖の水質の長期変動のデータはここで見られる。
http://www.byq.or.jp/kankyo/k_04.html
ご存知の通り,近年の琵琶湖では水質項目の数値は軒並み改善しているのだが,CODだけが漸増するという「典型的ではない?」状況になっている。その原因はウチの学長が現職の時に研究していた難分解性有機物だ。そういう例外的な項目を小学校の教科書に取り上げるのはどういう了見だろうか。