生物多様性国家戦略2010

昨日、公開された「生物多様性国家戦略2010」の中央環境審議会答申(ここ)を開いて、パブコメの後、どこがどう変更されたかチェック中。何しろ300ページ超の膨大な文章量なので、半日費やしてやっと第一部「戦略」の部分だけ読み終わった。本当は第二部の「行動計画」のチェックの方が面白いのだけれど、あとは明日のお楽しみ。

まだちゃんと読んでいない第二部だが、「普及と実践」「自然とのふれあい」の章の、河川に関する「具体的取り組み」だけは、12月10日版がツッコミどころ満載だったので、新版ではどうなったか調べてみた。

12月10日版。

魅力と活力ある地域の形成に向けて、地域と共同で地域及び河川の特性を活かした交流ネットワークを構築し、地域づくりの核となる水辺交流拠点整備のため、堤防の緩傾斜化、親水護岸、水辺の広場整備などを実施します。(国土交通省

パブコメでは、いったい何人から「この計画のどこが自然とのふれあいやねん!」と突っ込まれたことか。
3月1日版では、

魅力と活力ある地域の形成や自然とのふれあいの場の提供に向けて、地域と共同で地域及び河川の自然環境などの特性を活かした交流ネットワークを構築し、地域づくりの核となる水辺整備を実施します。(国土交通省

と、だいぶ控えめに変更された。
12月10日版のその次の項目。

河川の近隣に病院や老人ホーム、福祉施設などが立地している地区や、高齢化の割合が 著しく高い地域などにおいて、水辺にアプローチしやすいスロープや手すり付きの階段、緩傾斜堤防の整備などバリアフリー化を実現し、高齢者、障害者、子どもなどを含むすべての人々が安心して河川を訪れ、憩い楽しめる河川空間を創出します。(国土交通省

3月1日版ではこの項まるっと消滅。相当大勢から批判を浴びたのだろう。生物の保護には、人間が近づけない生息空間を残すのはとても重要なこと。

12月10日版、その2つ後の項目。

大都市などの中心市街地及びその周辺部の河川のうち、改修が急務であり、かつ良好な水辺空間の整備の必要性が高く、また周辺の市街地の状況などから見て、沿川における 市街地の整備と併せて事業を実施することが必要かつ効果的と考えられる河川について、水辺環境の向上に配慮した河川改修を行います。(国土交通省

12月10日版の消し線を見ると、「水辺環境の向上に配慮した河川改修」とは「マイタウン・マイリバー整備事業」を指すらしいので、ここで言う「環境」とは、人間にとっての住環境がメインだと理解するのが妥当だろう。
3月1日版にはもうちょっと本国家戦略における目的を明確にすべく、

…水辺環境及び生物多様性の向上に配慮した河川改修を行います。(国土交通省

と「生物多様性」が突っ込まれていた。この通りに実施していただけるとありがたい。
私自身は寄生虫屋として、第一部4.2「基本戦略」の中にある次の文、

特に、トキやコウノトリツシマヤマネコヤンバルクイナなどの保護増殖を進め、それらの野生復帰を進めていくことは、多様な野生生物をはぐくむ空間づくりの象徴として重要です。

に対して、「飼育下での保護増殖はあくまで非常手段なので(そのことは文中の他の章にも記述あり)、ここで「保護増殖を進め」などと、それを奨励するかのような表現はしないがよいとコメントしたが、却下されたようだ。