師匠の仕事は今日で終わった。ハンザキ虫のセルカリアの気になる点を調べて、単性虫の方はやる気がないらしく「スポロシストに炎細胞が4つぐらいあるはずだから、見といて」と言い残して帰って行かれた。そこでスポロシストを見始めたが、すぐにこれはとても大変な仕事だということに気がついた。第一、セルカリアの炎細胞の数を確定するだけでも一仕事なのに(ハンザキ虫の炎細胞は16個)、単性虫はセルカリアの数十倍も大きいくせに、炎細胞はたったの4つ程度である。しかも、単性虫というのは、要するにぶよっとした袋みたいなものなので、腹も背もなく、位置の目安となる体構造が全くない。その袋の表と裏を、400〜1000倍の顕微鏡で丹念にピント合わせをしながらスキャンするわけであるが、せっかく炎細胞を見つけても、視野をずらすたびに見失い、また探し回る羽目になった。今日ほど寄生虫を巨大な生物だと思ったことはない。