簇楯の再観察のため、B博へ出向いた。このプレパラート標本は以前、福岡にいた頃にB博から借りて観察したのだが、いざ論文を書こうとすると、細かい点が多々気になったので、もう一度見ておくことにした。
担当のGさんが、件のプレパラートの他、館所蔵の液浸標本を一通り出してきてくれた。プレパラートの観察を終えて、まあこっちも一応見ておくか、と液浸標本の方に移った。寄生虫は染色標本のプレパラートをつくらないと内部構造が観察できないので、液浸標本での同定はよくて属レベル止まりである。ところが、琵琶湖産と他地域産の液浸標本を並べてみたところ、どうも形が違う。あれ?と思って、液浸でもなんとか計数できる足裏のでこぼこ(楯吸虫の足の裏は、運動靴の底のように滑り止めのでこぼこがある)を数えてみたら、やはり少し違うようである。これはもしかすると別種なのかもしれないが、今ある標本だけでは個体数が少なすぎて結論が出せない。Gさんに相談して、とりあえず今度の論文からは琵琶湖産標本のデータは外すことにした。なんとかして新しいムシを手に入れなければ。
Gさんが、今度のフロアトークで使うのだと言って、生きたハリガネムシを持ってきた。「これはカマキリでもなく水の中でもなくて、変わった所でとれました。どこと思いますか?」と嬉しそうに言う。残念ながら私には答えがわかってしまった。でも、GさんがSchmidt-Rhaesaさんに問い合わせたところ、彼もハリガネムシが雪の上にいるというのは聞いたことがなかったらしい。この展開はどうなることやら。