カルガモ受難

m-urabe2006-05-31

朝、自転車を走らせていると、大学間近の道端に小さな生き物がチョコチョコと走っているのが目に留まった。近寄ってみるとかわいらしいカルガモのヒナである。親に遅れたのか一羽だけであった。車道と歩道のわずか15センチほどの段差もヒナにとっては一大事、必死のジャンプを繰り返している。見ていると何とか自力で歩道に飛び上がり、隣接した田のあぜへ駆け込んでいった。あぜの向こうは田んぼの排水路で、草の中からぽちゃんと水に飛び込む音がした。やれやれ。
ホッとしてさあ行こうかと道のほうへ向き直ると、おやおや、20mばかり向こうの道端に、こんどはカルガモの親と一羽のヒナがいる。親はすぐに歩道に飛び上がり、田んぼへ逃げていったが、あとにヒナが取り残された。このヒナも歩道へ飛び上がろうとするのだが、あいにくここの歩道際には幅10センチほどの側溝があり、上には5センチほどのすきまのある鉄の蓋が付けられている。ヒナは蓋のすきまに足を取られ、歩道へ飛び上がることができないのだ。そのうち、体まで蓋のすきまに嵌まってもがき出したので、捉まえてあぜに放してやった。
さあ、今度こそ行こうかと思った途端、足元からピーピーと声がする。あれまあ、側溝の中にも三羽のヒナがいる。どうやら、5センチもない蓋のすき間から落ちてしまったらしい。さてはこの子たちのせいで、先程の親鳥は道端をうろうろしていたのだろう。
側溝は端から端まで蓋が付いているので、このままではヒナは出られない。ほとんどの蓋は固定されていたが、所々にある排水升の部分だけは蓋を持ち上げることができる。これは、だれかに排水升の所までヒナを追い出してもらい、そこで掴まえるしかなさそうだ。そこで一旦研究室に行き、学生部屋にいたY君と一緒に、捕獲用のタモ網を持って再び現場に引き返した。
ところが、戻ってみるとヒナの姿が見えない。おそらく、側溝の下手の、コンクリートの蓋が被せられている部分に潜り込んでしまったようだ。そこからさらに下手に誘導すれば親のいる排水路に出られるので、Y君がコンクリート蓋を叩いて側溝を端から端まで歩いてみたが、結局ヒナは出てこなかった。30分ほどヒナの行方を探したが、結局諦めざるをえなかった。親鳥はひどく警戒しながらも、無事な2羽のヒナを連れて水路を行ったり来たりしていた。
その後、実習助手のU村さんも現場を見に行ってくれたが、ヒナは見つからなかったようである。夜までに親と合流できていなければ、おそらくもうダメだろう。幅10 センチの側溝もヒナにとってはトラップである。