おばあさん伝第五弾。
おわかりのように、おばあさんはお喋りである。たまに、おばあさんが一人で留守番をしている昼間に教会に行こうものなら、お茶を出されて何時間もお喋りに付き合うことも珍しくなかった。私はたしか3時間半付き合ったのが最長なのだが、前人未到の記録は後輩Sちゃんが打ち立てることになった。
ある日の夜7時頃、おばあさんの孫が仕事から帰ってくると、ちょうどSちゃんが教会から出てくる所に行き違った。家へ入ってみるとおばあさんがいて、テーブルの上には食器が並び、食事の後とおぼしき様子である。「きっと、Sちゃんが来たので夕食をご馳走したのだろう」と思っていると、おばあさんは孫の顔を見てやおら立ち上がり、「さて、晩ご飯を作ろうかね」とテーブルを片づけ始めたそうだ。
…テーブルの上の食器は昼食のそれであった。Sちゃんが教会に来たのは午前11時で、それから昼食を挟んで午後7時までおばあさんに捕まっていたのである。
この大記録は、おばあさんが亡くなるまで誰にも破られることはなかった。