どでかいマウス

寄生虫学会2日目、一般公演やシンポジウムは今日から。
シンポジウムで、マンソン裂頭条虫の分泌物による宿主の免疫抑制の話を聞く。寄生虫の分泌物というのは相当複雑な代物で、単に免疫反応を押さえるというだけではなく、いろいろな作用を持っているらしい。破骨細胞の形成を押さえたりもするので、関節リュウマチ骨粗しょう症の治療にも使える可能性があるのだそうな。
マンソン裂頭条虫は第一中間宿主がケンミジンコで、第二中間宿主がカエルである。本にはヘビや鳥も第二中間宿主として出ているが、これらはカエルを食べて感染する延長中間宿主であろう。終宿主は犬猫やイタチなどの食肉目である。ヒトも感染することがあるが、人の体内では成長しないのでやはり延長中間宿主である。で、その分泌物の作用の一つで驚いたのは(医学寄生虫学の分野では有名な話らしいのだが)、マンソン裂頭条虫をマウスに与えると(多分人間同様延長中間宿主になるのだろうが)、体がでかくなるというのだ。何でも、分泌物の中に成長ホルモン様の物質が含まれているそうである。写真で見ても、感染マウスは普通のマウスより明らかに一回りでかく、おそらく体重で1.5倍ぐらいは優にありそうだ。そのほかに、肝細胞の増殖を活性化するはたらきもあるそうで、なんだかネズミにとってはいいことのような気がする。これは、とても単なる免疫抑制物質の副作用とは思えない。なにか宿主の生態に重要な意味を持つ現象のような気がするのだが…
なお、人間のマンソン裂頭条虫感染者(マンソン孤虫症)で、背が伸びたとか肝機能が改善されたという話は聞いたことがありませんので、念のため。