外来種尽くし@淀川水系

今年の腹口吸虫検査のサンプルを受け取りにU治へ。ついでにインターン生のKさんも一緒に行って,カワヒバリガイの現状を観察してもらうことにした.外来種として日本のカワヒバリガイと北米のゼブラガイは似たような生態を持っているので(ただし、分類学的には遠縁である)、Kさんもいろいろ感じることがあるだろう。なおKさんの話では「五大湖のゼブラガイは原発の配管を詰まらせるので問題になっている」のだそうだ。温排水のおかげで成長もよくなりそうだし、さもありなんよ。
ところが今日はダムの放水量が多く,しかも私たちが到着して間もなく「これから放流量が増加します」というアナウンスまで流れ,残念ながらほとんど川にはアクセスできない状態だった.せめて貝は見てもらおうと比較的安全な浅瀬で私だけ川に入り、カワヒバリの付着した石を拾っていたら,突然私の背後1メートルほどの所を濡れた毛皮が流れて行った.一瞬、犬猫の死体が流れてきたのかとぎょっとしたが、よくよく見るとこいつであった。

宇治川で見るのは初めてである。よほど増えてきたのだろうか。
帰学後、三重のI橋さんが淀川水系産の大きなコイ(50cm級)2尾とフナ1尾を届けてくださったので早速解剖した。ゴルゴデラの他に(魚の)住血吸虫、条虫と、欲しい虫がいろいろ付いている魚である。しかし、デカイので私の手では魚をしめることができず、I橋さんが返り血を浴びながら苦労して頚椎を切ってくれた(ちなみに、私の研究室では出刃包丁や料理ばさみも立派な解剖用具である)。浸透圧変化に極端に弱い住血吸虫の標本作りは時間との戦いなので、BB君に手伝ってもらって大急ぎで検鏡をした。ところが、こんなに苦労したのに住血吸虫もゴルゴデラも1匹も寄生しておらず、腸内には2匹の条虫と1匹の楯吸虫だけ。季節が悪かったのかもしれないが、あまりの不漁ぶりにがっくりした。
唯一面白かったのはフナにラフィダスカリスがずいぶん付いており、おそらくこのフナは琵琶湖から降下したと分かったことと、そのフナの鰓蓋からLimnotrachelobdella sinensisと思われる大きくてグロテスクなヒルが4個体もとれたことだ。ちなみにこのヒルも腹口吸虫とほぼ同時期にユーラシアから移入した外来種で、淀川下流域でフナが衰弱しているのを見つけたら一応疑ってみるとよいと思う。