「人間探究学」の推薦図書の選択が行われている。もちろん若い時に良書にたくさん触れておくにこしたことはないが,基本的に大学不信の私としては,学生に授業で「これを読みなさい」などとえらそうに勧める気にはとてもなれないのである(もちろん,知識の習得に必要な本の話じゃない)。願わくば,よい本は自分で探し出してほしい。
私が今なんとなく考えている授業のコンセプトは「大学という社会の中で生き延び,あわよくば何がしかをむしり取った上で卒業するためのチエ伝授」だ。たとえば,先日買ったとある導入教育の教科書には,どう講義を聞き,どうノートを取るかなんていうハウツーが書いてある。高校までと比べて大学での授業の受け方が格段に難しくなるのは,単純に,ほとんどの教員は(私もだが)授業の構成の仕方や黒板の使い方などを学んだことがないからなのだ。教員免許の更新制導入が進められているが,大学教員は最初から無免許運転である(私も教員免許は持っていない)。「大学では受動的な受講態度はだめです」って,そりゃ無免許運転が走り回っている町でボケッとしていたら即死するわけで,そこを歩き回ったり,ましてやそのクルマをうまく利用してやろうと思ったら,それなりのチエが必要になる。無謀運転には最初から近寄らない,という手だってアリだ。
セクハラやアカハラへの対処法も同じ。まず自分を守るために自分の権利をきちんと理解してほしいし,学内処置の範囲内である「ハラスメント」と,刑法や条例で処分できる「犯罪」や「迷惑行為」の境目も知ってほしい。それから当然,ダイレクトに自分の身を守る安全教育も必要だ。
どうも,「学問することの喜びを伝える」といった高尚な導入教育を期待しておられる一部の方からは苦言を呈される内容になりそうな気もするが,ダメだというなら私は降りるぞ。