どっぷり生態学な一日

講義の準備をしていたらK君が来て、午後から彼の所属であるS先生の研究室のゼミがあるという。S先生は昆虫生態学が専門だが学生は1人を除いて全員が水モノ(主に魚類)という研究室である。それにしてもなんと心の広い先生ではある。
ゼミはブルーギルとヒロヘリアオイラガの外来種2題。思えば純動物生態学のゼミに出るのは久しぶりで、なかなか頭が周りのテンポについていかない。要ウォーミングアップ。
バスの研究をやっている人は私の出身研究室にも何人かいたがギルの繁殖生態の話を聞くのは初めて。コロニーを作って一斉繁殖するとは知らなかった。ということは、コロニーが形成できるほど密度が高くなると一挙に増殖速度が上昇するのだろう。しかも、一度の繁殖(卵と仔魚の保護)にかかる日数はせいぜい10日で、1シーズンに何回も繁殖が繰り返されるのだそうだ。恐るべき繁殖能力である。ヒロヘリアオイラガの方はキャンパスにたくさんいるらしいので幼虫が出る頃には立ち木の周りは気をつけよう。そういえばB博のN井さんはイラガ(幼虫)の背中を指の腹で撫でると気持ちがいいと言っていた。変な人である。
夕方にエコキャンパスプロジェクトの学生たちがやってくる。一人がカマキリとハリガネムシに興味があるそうだ。知名度の割に日本ではほとんど研究されていない生き物だがら、どんなデータでも大歓迎だ。分類、生活史、宿主の行動、どれもわかれば面白そうである。
また、環濠とその周りの水路の魚と水生昆虫、アシ植栽計画などについていろいろ話し合う。コイが全滅する前の環濠には何が入っていたかなどを教えてもらう。ある程度大きい水路から環濠までは、せせらぎ程度のささやかな水路を100mあまりも通過する必要があるのだが、オイカワがそこを通って環濠まで入っていたそうだ。自分も中下流の魚類の移動を調べたことがあるにはあるが、やはり魚が遡上に傾ける根性はすごいものである。環濠も環境さえ整えれば、コイの放流などしなくても自然に地の魚が居着くようになるだろう。
そういえば、修士の学生の副指導を複数の教員から依頼されているのだが、その大半がなぜか哺乳類の研究で、水モノが一人もいない。こんなことなら福岡にいる間にイノシシの研究をやっておくのだった。キャンパスに居ながらにしてイノシシの観察ができる大学など全国にそうあるまい(もし福岡在住の学生さんがこれを読んでいましたら、今からでもいいです、やってみませんか?)。それにしても、私はこの大学でどんな役割を期待されているのやら。