以心伝心


朝、比良の山々には今年最後の雪が薄く積もっていた。J君,雪だよ。雪だよ。
漫画家のNさんから手紙の返信があった。この前の手紙に「大学論」の感想を書いておいたら、どうもNさんはこの本を知らなかった様子であるが,早速お読みになられたということ。著者O氏のお仲間であるNさんにとってはとても懐かしい感じのする内容だったらしい。O氏は編集者として「マンガで食っていける人材を育てる」という実に明確でかつシビアな目標を実践してきたわけだし,その上「〆切がとうにすぎているにもかかわらず描こうとしない漫画家たちとバトルを続けてきた(Nさん談)」のであるから,大学生に発破をかけるぐらい文字通り赤子の手をひねるが如しだろう。
H端先生の客員研究員で,私の大先輩であったI先生が2月に亡くなられたことを知る。80歳を超えていたが昨年までお元気だったし,長生きの血筋らしいので,もっと研究を続けられるだろうと思っていた。もっとあれこれお話ししたかった。
I先生との初対面のやり取りは忘れられない。I先生と私はかつて同じ大学に勤務したことがあるので(もちろん時代は全然違う),最初にそのように言って自己紹介をした。そうしたら,I先生はそれ以上何も聞かず溜息をついて,開口一番,こう仰ったものだ。
I先生「あの大学は,まだああいう所なのかしらね?」
m-urabe「…そうなんじゃないですか?」
これだけの会話で話が通じてしまった。