初調査

2年振りで千葉のI海浜公園のカワツボ生息地を見にきた。ここはK高校の皆さんとT邦大のTさんが日本で初めてカワツボの♂を発見したところで、その後のH田さんの卒業研究で、ここの貝は30度を上回る環境でも生存可能であることが確認されている(Hamada et al. in press).その後、この生息地は昨年の津波で海水を被り、カワツボは絶滅したと聞いた。現在は、上記の皆さんが保存している標本が少数残っているだけである。
その後、残っていた標本の調査により、生息環境だけでなく繁殖様式についても、ここの個体群の特異ぶりが明らかになってきた。移入個体群としては前例のない真性の有性個体群であった可能性が濃厚なのである。そこで、津波後2年近く経過しているけれども、完全に絶滅してしまったのかどうか再度確認するため(ぶっちゃけ言えば、レフェリーからもっとデータを取れと要求されても「もうできない」と開き直るため)、現場を確認に来たというわけである。
2年前にはカワツボが多産していた小さな池を15分ほど探してみたが、やはり貝は全くいなかった。生態学的な関心から言えば、新規生息地における有性個体群と無性個体群との適応力を比較するまたとない機会を逃したとほんのちょっぴり残念な気もする。しかし、保全の観点から見れば、どれほどのフレキシビリティを発揮するかわからない有性個体群が、偶然にも拡散前に絶滅してしまったのは賀とすべきであるので、やや複雑な気持ちで、生き物のいなくなったコンクリートの人工池をしばらく眺めていた。
さて、せっかく千葉まで来たのだから、久しぶりに葛西臨海公園でも見てから帰ろうか。