日本を鳥瞰する

今日は読書。

関与と観察

関与と観察

神戸新聞あたりに連載していたコラムその他。こういう現代社会の分野にはまったくオンチだが、著者が精神医学者なので心理学的な視点が中心で、その点はとっつきやすい。
この本のメインは実は戦争心理学である。勿論、書かれている実戦争の表話裏話のどこまでが本当かなんて知る由もないが、それを別にしても、戦後外交の話などで「なるほど、これが政治的駆け引きというやつか」と感心させられる所が随所にあって面白い。こういう人間社会の動態も、広い意味では生態学なんだろうなあ。
日本人が上からの命令には従順で、理不尽であっても反抗せず、絶体絶命になってもパニックを起こさない(あきらめて状況を受け入れる)というのはよく言われることだろうけれど、これって典型的な農耕民族気質なんだろうなあ。土地から動くことができず、お天道さまには逆らえない。
身近な大学のことに引きつけてみると、最近、学内での必要性に駆られて、近年の大学の講座制の変化について調べた。やってみて改めて思ったことは、「制度は実情のあとをついてくる」ということだ。「制度上こうなっているから」ということは、議論の出発点にはならないのではないかと思う。制度は合わなければ変えられるのだ。それより、今、組織が現実的に担っている役割は何で、そのためにどういう制度をつくるのが効率的かを考えればいい。そのためには、面倒だが原則論も必要だ。
少なくとも、「うちの大学は以前からこうしてきたからこうする」「文科省がこう言っているからそのとおりにしなければならない」程度の判断基準しか持たない人間が大学の運営にかかわってしまった場合、教育面でも運営面でもどれほど混乱が生じるかはよく知っている。教育は、農協の指導どおりに作付けをすれば育つ野菜のようなものではないし、文科省(ウチの場合は県庁)はお天道さまではないのだ。

ちょっと毒っぽいな。あんまりこういうこと言うと、大学でミニMとかミニKとか言われそう。