寄り道

「動物学雑誌」の旧号(明治〜大正年代)をチェックするためにK大図書館へ。この雑誌は大部分国会図書館のデジタルアーカイヴとして閲覧することができるが、所々欠号があるため、全館揃っている図書館で欠号に私の欲しい情報がないかどうか確かめる必要があったのである。

今時、他大学の図書館まで足を運ぶ人というのはあまりいないだろうが、紙の雑誌というのはやはり面白いもので,めくっていくうちに目的以外の論文が目に留まり「え、ここにこんなものが」と驚くことがしょっちゅうある。今回、とても面白かったのは、とある寄生虫の一種が滋賀県では「トンボノコ(大津)」「トンボムシ(彦根)」と呼ばれて,一般の人はこれをトンボの幼虫だと考えていたらしいことである(中にはトンボノコがトンボに成るところを見たという人もいた由)。実はこの寄生虫,今では珍種中の珍種となってしまったムシなのだが、当時は一般の人でも存在に気付き、名前を付けるほど普通種だったということである。今ではどうしていなくなってしまったのか、考えてしまう。他に興味深かったのは関東大震災での各大学や研究所の人員・標本・資料の損害状況をまとめた資料だった。一番最後のところに「教訓」として、標本の転落防止措置を講じることやエタノール等引火しやすいものは標本室や図書館とは離れたところに保管するなど、今日では当たり前の配慮が提案されている。建物自体の耐震性や耐火性はもちろんのこと、当時はこのような資料保管上の配慮も不十分だったわけで、震災でどれだけの貴重な資料が失われたか、想像もできないレベルである。