書評というか、感想です。昭和51年刊、元寄生虫学会会長の森下薫先生による寄生虫エッセイです。日本の寄生虫学主流の発展から寄生虫にかかわる民俗、逸話、果ては業界の内輪話まで、豊富な題材と洒脱な書き振りが素敵な一冊。どれ一つ取っても読みたくなってしまう目次だけでも森下先生の文才が伺えると思います。個性豊かな寄生虫学者の列伝も(寄生虫学会員にとっては)楽しい。今再版したら売れそうな気がしますが、出版元の大阪予防医学協会さん、どうでしょうか?

目次
漱石の坊ちゃんと真田虫
西郷さんの隠された顔 ーフィラリアの証言ー
天皇の侍医となった少年の話 ー三浦謹之助博士の生涯と寄生虫学ー
鉢の木会議 ー日本寄生虫学会夜明前ー
サントニン物語 ー日本で育ったミブヨモギ
民間療法で寄生虫に罹る話
寄生虫民俗学 ー虫と共に生きた人たちの発想ー
光るばかりが能でない ーホタルは訴えるー
日本寄生虫学事始 ーその源流はライプチヒ学派ー
ジャン・マルタン先生言行録
呑兵ヱ先生列伝 ー寄生虫学会の三羽烏
ブラジルから来た日本の娘さん ー移住地マラリアへの回想ー
画期的発明「検便法」 ーその文化史的意義ー
第一例の発掘 ー日本に於ける寄生虫学の記録からー
ああ蛔虫! ー消えて行くものへの慕情ー