陸水学会企画シンポのテーマ「環境教育と陸水学〜善悪を超えて」についてしばし思いを巡らす。「環境学」は,人間から見た「よい環境,わるい環境」という価値観から始まる学問なので、それ自体は科学ではなくて哲学だし,小学校のカリキュラムで最初に「環境」を取り上げるのが社会科(生活科は?)であることも自然なことである。ところが「環境科学」となると,かなり広範囲な自然科学の知識が前提になってしまうので、どう考えても小学校で扱うことは無理。最速でも中学3年,できれば高校ではじめて取り上げるのが望ましい。例えて言うなら,必ずしも科学的とは言えないが皆の役に立つ「家庭の医学」レベルの知識と,科学の方法論に則った「真の医学」ぐらいの違いだ。しかし,もちろん環境問題は国民全体が関わる問題であるので,義務教育の「環境学」で(科学の素養が不十分であることを,ある意味容認した上で)何を教えるべきなのか,しっかりと考えなくてはなるまい。ゴミ処理と上下水の学習の次に,簡易水質指標生物のような「環境科学ごっこ」に走ってはならない。