ミツバチの会議: なぜ常に最良の意思決定ができるのか

ミツバチの会議: なぜ常に最良の意思決定ができるのか

ようやく読みきりました。動物行動学の元祖と言ってよいミツバチのダンスによる集団意思決定機構の解析です。数々の実験手順が丁寧に記述され,平易でしかも楽しい読み物になっています。これから動物行動の研究を始めたい大学生には,研究の楽しさを教えてくれるぴったりの1冊で,実験計画の参考になる内容も沢山含まれています。
もっとも,今の私には最終章の「分封群の知恵」が非常に役に立ちました。ミツバチの意思決定機構から見て,ヒトの会議はどのようにすれば集団の知を効率良く,しかもベストの回答に導けるか?という応用編です。著者は5つの「教訓」を挙げていますが、これら以外にも本書を読んであれこれ思ったことはあります。たとえば,「ある程度自分の主張を述べたら、しばらく沈黙して周囲の評価に任せよ。1人が主張に固執すると会議が動かない。」「判断材料をたくさん提供するのは必要だが、最終判断を下すのは別の人物集団であれ」「ある時点で少数派であったとしても臆さずに主張せよ。賛同者が出れば少数派でなくなる」等々。いやもう,実に時宜を得た1冊と言うほかありません(笑)。