K医科大学のY先生が、人体から得られたというハリガネムシ2匹を持ってお見えになった(ついでながらハリガネムシは人体にはまず寄生しない。今回も、寄生というよりハリガネムシを誤食したと考えられるケースである)。2匹は別の患者さんからのもので、居住県も別々である。既に遺伝子解析で、2匹はザラハリガネムシ科の同種ということは確認しておられたので、それなら光顕でもアリオール観察で属まではわかるだろうと思った。
で、標本を見せていただくと非常に特徴のあるアリオールがあり,属はあっさりと判明してしまった。以前、shimotsukiさんが大台ケ原で集めたサンプルの中に含まれていたのと同属別種のようである。もし種までの同定が正しければ日本では75年ぶりの発見となる。それにしても、日本産ハリガネムシ類の中で平地に普通に分布するのはGordiusとChordodesの2属だけであり、それ以外の「レアな」属は大部分が山地からの報告なのに、今回、人間による誤食が続けて2例も出たのは奇妙な気がする。そこで、Y先生に、ムシの産地をできるだけ詳しく調べていただくようにお願いした。ちょっとした発見があるかもしれない。